初日2日は朝１０時からいよいよ茶会が始まった。前夜から準備してきた会場は、大使館からお借りした豪華な金屏風を背に大宗匠の「和」の色紙、日本から苦心して運んだ大版の日傘、艶やかな漆黒の御園棚、そしてその上に飾られた水差し、風呂と釜と茶碗と棗（なつめ）。正式で見事な点前座だ。
　そこに8人の会員と応援の大使館員2人が正装の和服にきりりと身をあらため、お客さまを迎えて立った姿は、日本の文化、茶道文化をそのまま表現している。華やかで、ゆかしく、そして堂々と。

　老若男女、大勢のベトナムの人たちが入場してきた。第一席はすぐに埋まった。初めて体験する日本の茶会の空気とセットに圧倒されたか皆さん一様に静かにそして真剣に正面の席に座ってお点前を始めた亭主の動きを見つめている。お手伝いのフォンドン大学の女子学生が和服を着て菓子とお茶を配る。お運びという大事な役目だが、学生たちは教えられた通り要領よく配っている。器用さ、飲み込みの早さはベトナム人の特質である。

　お客は菓子をほおばり、お茶を味わう。実に満足げな表情だ。

そして第二席に入れ替わる。さらに後には順番を待つ沢山の人が立ってお点前を見つめている。皆さんの真剣さが伝わってくる。ベトナムの女子学生も多勢見えた。彼女たちはとりわけ熱心だ。「ぜひお茶を学びたい」と私に懇願する学生もいた。

　茶会には旅行社や在越の欧米人も多く見えた。フランスの植民地の歴史の由か、フランスや西欧の人が多かった。これは最近の激増する外資導入の結果でもあり、ベトナムの現在を象徴している。

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