【人情世態(ニンジョウセタイ)は、倏忽(シュクコツ)万端(バンタン)たり。】と読みまして、人の心や世の中のありさまは、たちまち変わり、またいろいろな様相を呈するという意味です。
だから、ある一点だけを取り上げてそれだけが真実であるとしてはいけない、と続きます。
出典は『菜根譚』後集57条です。
人情世態、倐忽万端。
人情世態は、倏忽万端(シュクコツバンタン)たり。
人の心や世の中のありさまは、たちまち変わり、またいろいろな様相を呈する。
不宜認得太眞。
宜しく認め得て太(はなは)だ眞(シン)なりとすべからず。
だから、ある一点だけを取り上げてそれだけが真実であるとしてはいけない。
堯夫云、昔日所云我、
堯夫(ギョウフ:北宗の学者)云う、昔日(セキジツ)我と云う所は、
堯夫がいうには、昔、自分のものといっていたところのものは、
而今却是伊。
而今(ジコン)却(かえ)って是(こ)れ伊(かれ)なり。
現在ではそれは他人のものとなっており、
不知今日我又属後来誰。
今日(コンニチ)の我は、又後来(コウライ)の誰に属すかを知らず。
現在自分のものといっているものが、将来、誰のものになるかは解からない。
人常作是観、
人、常に是の観を作(な)さば、
人はいつでも、このような見方をしていれば、
便可解却胸中罥矣。
便(すなわ)ち胸中の罥(ケン)を解却(カイキャク)すべし。
そうすれば胸の中につかえている“わだかまり”は無くなるものである。
過去や、未来にとらわれずに、何事にも偏らずに観る事を心がけていれば苦労はなくなる。
ということのようです。