【人(ひと)の情(ジョウ)は、鴬(ウグイス)の啼(な)くを聴(き)いて則(すなわ)ち喜(よろこ)ぶ】と読みまして、人の心は、ウグイスが美しい声で鳴くのを聞くと喜ぶ、という意味です。このあと蛙が騒がしく鳴くのを聞くといやに思う、と続きます。
出典は『菜根譚』後集49条です。
人情聴鶯啼則喜、聞蛙鳴則厭。
人の情は、鴬の啼くを聴いて則ち喜び、蛙(かわず)の鳴くを聞いては則ち厭(いと)う。
人の心は、ウグイスが美しい声で鳴くのを聞くと喜び、蛙が騒がしく鳴くのを聞くといやに思う。
見花則思培之、遇草則欲去之。
花を見ては則ち之れを培(つちか)わんことを思い、草に遇(あ)いては則ち之を去らんと欲す。
美しい花を見るとそれを栽培しようと思い、雜草を見ると、それを抜き取りたく思う。
倶是以形氣用事。
倶(とも)に是(こ)れ形気(ケイキ)を以て事を用(もち)うるのみ。
いずれもものごとの表面的なもので、良いか悪いかを判断しただけである。
若以性天視之、
若(も)し性天(セイテン)を以て之(これ)を視(み)れば、
もし、それらのものの内面的なものを見たなら、
何者非自鳴其天機、
何者(なにもの)か、自(みずか)ら其の天機(テンキ)を鳴(な)らすに非(あら)ず、
どれが、みずからその天性の妙なる聲を鳴らさないものがあろうか、
非自暢其生氣也。
自ら其の生気(セイキ)を暢(の)ぶるに非(あら)ざらんや。
また、どれがそれ自身、万物を生成させる働きをしないものがあろうか。