【花(はな)は玉缸(ギョッコウ)を撲(う)って春酒(シュンシュ)香(かんば)し】と読みまして、花びらが卓上の玉のかめに落ちて、春の酒は一段とよい香りを放っている、という意味です。
出典は盛唐の詩人:岑參(シンジン)の『韋員外(イインガイ)の家の花樹(カジュ)の歌』という七言古詩です。
今年花似去年好
今年、花は去年に似て好し
今年の花は、去年と同じに素晴らしく。
去年人到今年老
去年、人は今年に到りて老ゆ
去年の人は、今年になって老(ふ)けこんで
始知人老不如花
始めて知る 人老いて花に如(し)かざるを
人間は花には及ばず老けていき
可惜落花君莫掃
惜しむべし 落花 君掃(はら)うこと莫(な)かれ
散りゆく花を惜しもう、韋員外君よ、掃かないでくれ
君家兄弟不可當
君が家の兄弟(ケイテイ)当(あた)るべからず
あなたの家の兄弟には、かなわない
列卿御史尚書郎
列卿(レッケイ) 御史(ギョシ) 尚書郎(ショウショロウ)
御兄弟、みな高官で
朝囘花底恆會客
朝(チョウ)より回(かえ)りて 花底(カテイ) 恒(つね)に客(カク)に会(カイ)す
家に帰れば、いつも宴会か
花撲玉缸春酒香
花は玉缸を撲ちて春酒香し
散る花びらは酒壷に、春酒のなんと香(かぐわ)しき