【人(ひと)には各々(おのおの)好尚(コウショウ)有り。】と読みまして、人にはそれぞれこのみがある、という意味です。
出典は『言志晩録』165条です。
人各有好尚。
人には各々好尚有り。
人にはそれぞれ好みがある。
以我好尚争彼好尚、
我が好尚を以て、彼れの好尚と争うは、
自分の好みをもって他人の好みにケチをつけて争っても、
究不見眞是非。
究(つい)に真の是非を見ず。
本当の善悪を定めることは出来ない。
大抵事不干眞是非、
大抵、事の真の是非に干(あずか)らざるは、
大抵の事柄で、真の善悪に関係ないことは、
則任彼好尚
彼れの好尚に任ずとも、
相手の好みに任せても
亦有何妨。
亦(また)何の妨(さまた)げか有らん。
何の妨げがあろうか
乃曉曉憑己、
乃ち暁々(ギョウギョウ)として己れに憑(よ)りて、
すなわち、口やかましく、自分を拠り所として、
以角争銖錙
以て銖錙(シュシ)を角争(カクソウ)するは、
僅かなことを争うのは、
秪見局量之小。
秪(ただ)に局量(きょくりょう)の小なるを見るのみ。
ただにその人の度量の小さいことを現わすだけのことである