■ゼロックス・コーポレーション在日代表　塩川哲也　8月24から26日にかけ故郷の西郷村川谷に帰省した。白河高校山岳部時代に頻繁に縦走した那須・甲子連峰があざやかな夕焼けに映えていた。昔も今も変わらぬ素晴らしい眺望だ。この山々を眺めるだけで、本当に心が安らぐ。自分の源はここにあるのだと、気づかせてくれ、都会の喧騒や仕事のストレスを解き放ち、心に気を満たしてくれる。
　小学校時代は阿武隈川に泳いだ。かじかをヤスでついて焚火（たきび）であぶって食べた。イワナやハヤも釣っては食べた。野に山にミドリシジミやヒョウモンチョウを追った。朝な夕なに毎日仰いだ美しい自然だ。
　25日に「西郷村の少年の主張大会」に講演講師として参加させていただいた。西郷村の教育長をされている私の中学時代の恩師加藤征男先生と１年前に再会し、「福島の原発問題で苦しむ地元の若い人たちのために何かできることはありませんか」と、ご相談させていただいたことがきっかけで、講演をすることになったのだ。講演前に「少年の主張」をすべて聞かせていただいた。心なしか、登場した小中学生の皆さんが少し陰があって元気がないのではないか、と感じた。大会の緊張もあるのだろうが、表情も硬く、暗い印象すら受けた。やはり原発の影響は少なからず影を落としているのだ、と心が痛んだ。
　しかし、彼らの主張は世の中や人生の問題を真正面からとらえ、自分の思いや考えをしっかりと伝えていた。聞いている者の心を揺さぶるような波動とパワーがあった。いくつかの主張は、図らずも自分が涙するようなインパクトすらあり、深く心から感動した。
　頑張ってね！　応援するからね！自分を育んでくれた自然や人々に感謝の思いをこめ、若い人達に向けて講演をさせていただいた。講演途中で彼らの表情が心なしか和み、笑顔ものぞいたように思った。
　東京に離れて暮らしてはいても故郷を思わない日はない。
　

　ふるさとの山にむかひていふことなし　ふるさとの山はありがたきかな（石川啄木）

  来年もまた、その次も、機会がある限り故郷・西郷村での講演は続けさせていただきたいと思っている。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2012年８月30日）