郡山市の脳神経疾患研究所・附属総合南東北病院理事長・総長の渡辺一夫さん（６７）は１８日、同市で開いた異業種交流団体・MBA２１で講演。「大震災と医療支援」をテーマに、原発震災の克服と福島県復興のため、本県を医療産業のメッカにしていかなくてはならないと強調した。
　はじめに渡辺さんは、昨年３月１１日の大地震から１週間後、同病院が正常な手術ができるようになったことを報告。その上で１都4県にある５４の関連病院、施設、センターが、「パッション（情熱）を持ってナンバーワンの病院を目指している」と語った。
　切らずに治す最新の放射線治療や、遠隔操作によるロボット手術にも言及し、全国でも数少ない最先端医療機器のMＲＩ、ＰＥＴ（ペット）、サイバーナイフなどを紹介した。８月１日にオープンする川崎市の新百合ヶ丘総合病院（病床数３７７）には、これらの最新医療機器が導入され、国内最高水準の医療サービスが行われるという。
　一方、同病院が東京理科大と協定を結び大学院大学、生命医科学大学病院を設立する構想を明らかにした。近く正式発表する予定。
　低線量放射線被ばくと人体への影響については「防御能力の範囲内の低線量であれば、特段障害はない」と、健康被害への懸念を払しょくした。被ばく線量１０００～２０００ミリシーベルトの間で、被ばくしなかった人と比較すれば健康被害は１・８倍のリスクがあり、例えば喫煙・飲酒なら１・６倍、やせ形なら１・３倍、肥満・運動不足・塩分の取り過ぎで１・２倍、１００～２００ミリシーベルトと比べて１・１倍とした。いずれも年間積算量。
　ある一定の放射線量が人体に有益な刺激をもたらすとされる「放射線ホルミシス効果」にも触れ、「ラジウム温泉など微量な放射線が増殖促進をもたらすなどの例が多く」とした。ホルミシス効果はヒトの培養細胞に０・２５Ｇｙ（グレイ、吸収線量の単位）を照射しておくと、次の２Ｇｙの照射に対して２倍の修復機能を持つという実証結果に基づく。
　また、同病院は放射線医療とロボット手術に力を入れており、放射線でがんだけを破壊するホウ素中性子捕捉療法に着手している。渡辺さんは、病巣を高精度のピンポイントで治すロボット手術や、がん診断と治療のためのＰＥＴ検査、ガンマナイフ治療、陽子線（粒子線）治療も取り上げて分かりやすく説明した。