私のルームメイトは、台湾からきている19歳の女の子、『Ｚ』さんです。彼女の英語は抜群で、時々中国人との通訳に大学の先生に呼ばれていきます。今までにもう3回はありました。しかし、通訳から帰って来ると彼女は決まって機嫌をそこねています。どうやら、感謝してもらえないことが、彼女がへそを曲げてしまう原因のようです。十分に役に立てたと思っても、「Ｔｈａｎｋ　ｙｏｕ」のひと言を言ってもらえないようなのです。長い間の歴史の中でいろいろと難しい感情があるようで、彼女は「もう通訳してあげない」と怒ってしまいました。
　日本は島国なのでよく理解できない部分がありますが、シンプルに一対一の人間として向き合って付き合えればいいのになあ、と思います。
　 その彼女が、私を通して知った異文化についてレポートを書くというのです。「Ｈｅｌｌｏ！」とあいさつしたその次の日から、毎晩寝床についてからのからの長いおしゃべりで、私たちはすっかり友達になっていました。正確に言えば、私のつたない英語を辛抱強く聞いてくれて、何度も聞き返す私を唯一邪険に扱わないでくれる友、正確な表現を英語ではできなくても、なんとなく言いたそうなことがわかる相手、と言ったところでしょうか。
 　私は異国に来たチャンスに、新しい自分を出そうと思っていたのに全くダメ。日本にいる時と同じ自分しかないと認識したところでした。消極的なわけではないのですが、ほかの人と比べて自分を主張できず、また主張したくない自分に気づく時があります。
　それは日本人だからという理由ではなく、私がそういう性格だからだと思います。そして、私は案外そういう自分が嫌いではないこともわかりました。主張するほどでない事柄までどんどん主張する勢いが、私には向いていないと思う時もあります。また、外人がみんな自己を強く主張するかというとそんなこともなく、曖昧な表情もよくあってその気持ちがお互いよくわかったりもします。
 　彼女に、華と別れ離れになったらとても寂しくなると思うようになったと言われ、心が通いあっていると感じ嬉しくなりました。
　それではまた。