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復興への思い

「解決の鍵は心にある」 天台宗僧侶・新井田慈英

天台宗僧侶・新井田慈英

 【略歴】1976年生まれ。栃木県大慈寺法嗣、天台宗僧侶。財団法人東方学院研究会員。東北、関東で仏像の修復・制作を手がけている。福島県会津若松市在住
■栃木県大慈寺法嗣、天台宗僧侶・新井田 慈英 多くの尊い命を、故郷を奪った東日本大震災から間もなく1年が経つ。3月11日、私は都内のカルチャー教室にいた。受け持ちの講義の待ち時間中だった。コーヒータイムでくつろいでいたところに、大きな揺れが襲った。「東京にとうとう大地震が来てしまった」と思い、覚悟を決めた。故郷の会津のことも気になった。思いは募るものの、故郷への帰宅は困難を極めた。
 無理を承知で泊めてもらった学校の事務室で見たものは、テレビ映像から流れる津波と火災の宮城県気仙沼市の惨状だった。都内は翌朝になっても混乱が続き、食料は手に入らず、移動もままならない状態。極度の不安と、あせり、怒りを抱えた大勢の人、人、人の波。その中で私は孤独にさいなまれ、とにかく会津に帰りたい一心だった。
 行く先々で友人、知人に頼み込み、「今晩だけでいいから」と宿を乞うた。こうしたことが一週間以上続いた。栃木県経由の鬼怒川線は余震のたびに停止し、行く先の駅も変わっていった。その途中で立ち寄った師の寺で知ったのは、原発の放射能事故だった。師に帰宅を見合わせるよう説得されたが、やはり帰りたかった。とにかく、「生まれ育った会津に帰らなければ」という思いは本能以外の何ものでもなかった。一面真っ白な雪化粧の、「キーン」と冷たい空気の西若松駅に降りた瞬間、その安ど感はこれまでの私の人生で感じたことのないものだった。
 周りの人は、私の歩んでいる人生を「風変り」と見る。私自身は何のためらいもなく生きてきたわけだが…。その私は天台宗の僧侶にして、寺の生まれではない。職業を尋ねられれば、仏像を刻み、壊れた古い時代の仏像を修理する「仏工」と答える。まったくの無学だが、仏像好きが高じて、このような職人となり、幼少時代から憧れていた先生のもとで学ぶことができた。得度し、修行もさせてもらった。
 昔、旅の僧が仏像を刻み、方々を転々としたことは知られていても、現代では風変りと見えるらしい。被災地の仙台、登米市、それに山形、栃木、埼玉各県の寺々からも声をかけられ、仏像の修理を頼まれている。昨年は修理でたびたび被災地を訪れた。こうして営みの大半が、旅の空のもとだった。どの土地でも手厚く迎えられ、むしろ私自身の心を助けてもらっているかのようだった。被災地にあって人の優しさと情けが身にしみた。
 そうした中にあっても、「福島から来ました…」と名乗った途端、驚きと不安の顔を隠せない人もいた。あからさまに、「大丈夫?」と聞く人もあり、「やっぱりか」と、悔しい思いにさいなまれることもあった。震災、原発事故を境に、他県にいる私が、他県の人から福島をどのように感じ、見ているかを否応なく知らされる立場に置かれてしまった。だからと言って、非力な私に大そうなことができるわけでもなく、復興に手を差し伸べることされ出来ずにいた。
 昨年秋、チベット仏教の最高指導者であるダライ・ラマ法王が東北の被災地を回られ、福島県では郡山市で講演された。聴講することができたが、さらに郡山駅で偶然にも法王とお会いできるなど、私の心は晴れわたり、清々しい気持ちになった。
 法王がよく口にされる言葉がある。「難しい問題を抱えて、その相手を変えたければ、まず、己自身が変わること」。私は、お金やモノ、ましてや暴力ではなく、問題解決のカギは心であると解釈している。「人間は金持ちも、そうでない人も、昔から問題を抱えて生きてきた。それを乗り越えてきたからこそ、私たちが今、ここにいる。だからノープロブレムです」と語った法王の言葉は、祖国から亡命し、多くの難題を背負っている人だからこその、言葉の重みが伝わった。無責任に福島について発言する人、利権や利害で行動する人によって、多くの県民が悲しい思いをしている現実を、この一年嫌というほど味わった。古人は、「口舌の刃で人を切る」と言うが、残念ながら本当だった。ちょっとした言葉でも、他人の心に傷を負わせることがある。それもすべて、心が元である。
 会津のある老僧の話しだが、「人間、一人ひとりも原子で出来ている。心臓が原子炉で、口から燃料を入れて動いている。頭が命令しているが、元は心。その指令如何で、人に優しくして世のために働きもすれば、暴走すれば自分自身も他人も傷付けてしまう。口から発する言葉は目には見えないけれど、これまた同じこと。だから一人ひとりが気を付けなければならないし、安全装置が必要。安全装置?それは人と人との絆だよ。子どものケンカに始まり、大きな戦争に至るまで、すべて人と人の心の絆があれば、相手を認めて優しい言葉をかけられたら、起きないだろうに…」。
 大きな力は無いが、心をキーワードに壊れた仏像を修理することを通じ、県内外の人たちと言葉を交わし、絆を結んでいくことで、前に進んで行こうと思う。日々、犠牲者のめい福を祈り、これからの復興を念じたい。


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