大震災、津波、原発事故、風評被害と度重なる苦難を背負う福島県民の思いを託した歌「悲しみの青い鳥」が完成し、郡山市のコーラスグループなどによって歌い継がれている。
　東日本大震災、福島原発事故から2カ月が過ぎた2011年5月。県民が抱える不安やいたたまれない気持ちを希望へと誘い勇気づける詩（うた）が、田村市大越町の久住秀司さん（71）によって出来上がった。この詩に岡山県の童謡作曲家、高月啓充さん（76）が曲をつけた。2人を結びつけたのは、郡山市の詩人後藤基宗子さん（68）。後藤さんの朗読会の活動がきっかけとなった。
 
　震災から8カ月後の11月、後藤さんは川内村を支援するボランティア団体「川内かえる塾」の講師を頼まれ、朗読会を開いた。心の復興が大切であると考えた後藤さんは「文化の灯を消さないで」という題で詩の朗読を行った。
　川内村は福島第一原発からほぼ20㌔圏内。警戒避難地域となったところもあり、村民の4分の3が県内外に避難していた。
　後藤さんは朗読会で「心に蓋（ふた）をせず、悲しみを出していく」ことを村民たちに勧めた。そして「詩を書いたら送ってください」と参加者たちに呼びかけた。
　ほどなく後藤さんの手元に送られてきたのが、短歌を学んでいた久住さんからの詩だった。題名は「悲しみの青い鳥」。震災から2カ月後の作品だった。久住さんは、未曾有の原発事故の被害を受けた県民のひとりとして、「大変な時代となり、悲しい気持ちの中にあっても、これから復興に取り組もうとする強い気持ちを子孫に伝えたいという思いで作りました」と当時を振り返る。
　その作品には、福島県の三地方（浜通り、中通り、会津地方）の風物が織り込まれており、「一陣の風吹いて」は原発の爆発当時の瞬間を、「豊饒（ほうじょう）の大地」は福島県の温和な気候や米、くだもの、水産物が豊かな事を綴っている。
　後藤さんは「浜通り、中通り、会津の三つの地域の魅力が散りばめられ、福島県への深い思いと再興への信念が感じられる」と、親交のあった作曲家の高月さんを紹介したことで「悲しみの青い鳥」の歌へとつながった。
 
　高月さんは「自然豊かな福島と人情味あふれる県民に触れ、まさに豊饒の大地である福島の復興への強い意志を感じ、メロディーをつけました」と話す。
　後藤さんの勧めで、郡山市の合唱団「たのしい歌声」でも歌われており、団員たちは「歌うほどに、味わいの出る曲であり、詩も素晴らしい。多く人に聴いてもらえるよう紹介していきたい」と話す。
　久住さんは、「2人の先生との出会いに感謝したい。より多くの人たちに歌われ、その思いをつないでいただけるなら、これほどうれしいことはない」と感無量の面持ちで語った。
 

「悲しみの青い鳥」久住秀司さん作詞・高月啓充さん作曲・歌シレーネカンタンテ　　 http://youtu.be/Mu-JHn_jyhw

　（写真右下：久住秀司さんと後藤基宗子さん）